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第6回「睡眠中に呼吸がとまる」

昼間起きている時の呼吸は何ともありませんが、眠るとたびたび数十秒にわたって息が止まると妻から言われます。息が止まると、ノドから雄叫びのような音を発して息を吸い込んで息を吹き返し、あえぐようにハーハーと荒い息をするそうです。昼間に眠気があります。睡眠時無呼吸症候群という病気についての記事を読みましたが、それとそっくりです。検査や診断を受けるにはどこを受診すればいいのでしょうか。
(56歳、男性)

回答

典型的な「睡眠時無呼吸症候群」の呼吸に関する描写と言えます。
この病気は、睡眠中にのみ息が止まる病気ですが、二次的に様々な病気を合併する点で注目されるようになりました。
10秒以上呼吸が止まっている状態を無呼吸といいますが、無呼吸が1時間の睡眠中に5回以上(または7.5時間の睡眠中に30回以上)出現する場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸は、中枢型、閉塞型、混合型に分けられますが、ほとんどが質問者の場合と同じで舌がノドに巻き込むなどして気道を塞いでしまうために起る閉塞型あるいは混合型無呼吸です。

 無呼吸が数十秒間も続くと、脳は覚醒して(本人は憶えていない)ノドの筋肉を緊張させる命令を送り、呼吸を再開させます。
無呼吸そのもので死ぬことはまずありませんが、無呼吸のたびに短い覚醒が起るので睡眠は分断され、質量ともに不十分となり、昼間の眠気や疲労感が生じる原因となります。

 大惨事にこそ至りませんでしたが、2003年2月26日に新幹線の運転士が8分間26kmも居眠り運転をして大きな社会的問題になりました。
この運転士は後の検査で睡眠時無呼吸症であったことがわかりましたが、眠気のために交通事故を起こす頻度が高いことはよく知られています。
また、夜間の呼吸が不十分なために血液は酸欠状態になります。その結果、酸素を運搬する赤血球が代償的に増加し、血液が濃くなり、血液がつまって脳や心筋の梗塞を起こしたり、高血圧を生じるなど様々な合併症を生じることになるのです。

 睡眠時無呼吸症候群を正しく診断するには、睡眠中に呼吸が止まっていることを証明することが必要ですが、一晩中寝ずの番で無呼吸の回数や時間をチェックすることなど実際には不可能なことです。
睡眠相談を行っている病院や睡眠センターを開設している病院では、専門の医療機器を用いて睡眠時の呼吸状態だけでなく、睡眠状態、血液中の酸素濃度、いびきなどを終夜にわたって調べる睡眠ポリグラフィー検査を行って睡眠時無呼吸症の重症度などを診断します。睡眠ポリグラフィー検査については第4回で説明しました。