第15回「飲酒をやめると眠れない」

約20年前より晩酌をしています。晩酌をしないと眠りが悪く、毎日欠かすことができません。最初の頃は日本酒1合を飲んでいましたが、徐々に増え、2-3年前より毎日3合飲むようになりました。休みの日は朝から缶ビールを飲むこともあります。脂肪肝と言われたために断酒したところ一睡もできず、悪夢にうなされひどい目にあいました。1合にしましたが、不眠に悩まされています。
(50歳、男性)

回答

アルコールは百薬の長とも言われるように、昔から薬代わりとして用いられていました。
適当な量のアルコールは、緊張をほぐし、不安を軽減し、しかも眠気をもたらすために睡眠薬としてもよく使われてきました。
それは今でも同じで、数年前の久留米大学睡眠障害外来の調査でも、不眠症の80%がアルコールを睡眠のために用いたという結果が得られています。

 アルコールには本当に催眠作用があるのでしょうか? アルコールと睡眠の関係について検討した研究によると、適当な量のアルコールは入眠までの時間を短縮し、深い睡眠を増加します。
つまり寝付きが早くなり、眠りが深くなるのですが、これは一時的なものです。むしろ弊害のほうが多く、飲酒によって夢を見るレム睡眠は極端に減り、睡眠の後半は眠りが浅くなり、睡眠の質にはかなりの歪みが生じます。
また、アルコールの睡眠作用には耐性(効果が次第になくなる)が生じるために、1週間も飲酒を続けると、入眠の早さ、深い睡眠の増加はみられなくなり、睡眠時間は徐々に短縮していきます。
そして飲酒を中断すると、飲酒開始前よりも寝つきは悪くなり、睡眠は浅くなってたびたび目が覚め、さらにレム睡眠が反跳性に増加し、これが悪夢の原因にもなります。
アルコールの催眠効果には耐性があり、同じ睡眠効果を得るには飲酒量を増やさねばならなくなり、こうして飲酒量が増えていくのです。

 長年にわたり常用飲酒を続けると、肝臓が悪くなるだけではなく、不眠に悩まされる人が多くなります。
肝臓や睡眠の問題だけならまだ良いほうです。アルコール中毒状態になると、信頼を失くし、人間関係が崩壊し、家庭、職場、社会の問題として表れ、仕事、妻、家族を失うなど深刻な状態に陥ります。
そして、幻覚、意識障害、興奮などを呈する危険で恐ろしい振戦せん妄を発症し、ひどい場合は認知症に至ることもあるのです。

 皮肉にも、不眠の解消のために用いたアルコールが原因で不眠症を生じ、アルコール依存症に進展した人が少なくありません。十分な注意が必要です。