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第14回「早い目覚めとひどい疲労感」

建設会社の営業部長。不景気で会社の営業成績が低迷しています。
1-2ヶ月前から熟睡感がなく、朝早く目が覚めるようになりました。
会社に行っても、午前中は億劫で疲労感が強く、帰宅の時間になると少しよくなりますが、翌日の朝になるとまた同じで、その繰り返しです。
3時間くらいで目が覚めてしまいます。8時間以上ぐっすり熟睡できれば、調子も出てきそうですが、何かよい方法はないものでしょうか。
(54歳、男性)

回答

これは単なる不眠症ではなく、「うつ病に伴う不眠」と考えられます。

 うつ病は、気分が落ち込み、楽しみが消え、人と会いたくなく、何かをするにも億劫で、集中力や持続力が低下しますが、気分(感情)の障害だけでなく、いろいろな体の症状が出現します。
特に倦怠感、睡眠と食欲の低下は、発病の比較的早くから、しかもかなり高い頻度で認められます。
また、うつ病の症状の強さは一日の中でも変動することがあり、朝が最も悪いことが一般的です。
病気が進むと、「役立たずで、生きていても迷惑をかけるばかりで申し訳ない」と自分を責め、自殺を考え、ひどい場合はそれを企図することさえあります。

 うつ病では、いろいろな心身の不調を伴いますが、その中でも不眠はもっとも高頻度にしかも発病の初期からみられ、うつ病の重要なサインと言えます。
うつ病では寝つけない、熟睡感がないなどいろいろなタイプの不眠が起りますが、3時頃には目が覚めてしまい、その後眠れないという早朝覚醒型の不眠は、うつ病を特徴づける不眠の型といえます。
早朝覚醒が多いことの説明として、うつ病では生体リズムの位相が前進しているという仮説があります。
その証拠に、睡眠ポリグラフィー検査を行うと、うつ病では睡眠時間が短縮し、深いノンレム睡眠が減少し、睡眠は浅く中断が多く、レム睡眠が早く出現するといった所見が得られています。
これは健康人の睡眠の前半がカットされた後半の部分と同じような睡眠であるからです。

 うつ病に伴う不眠はうつ病そのものを治さないと改善しません。
最近は副作用の少ない新しいタイプのうつ病の薬が開発され、一昔前と比べると治療がしやすくなりました。
また、催眠作用のある抗うつ薬を就寝前に服用することで、うつ症状も不眠も改善し、睡眠薬の使用を減らすことができます。
決断力が鈍りますが、早期治療は重要なことですので病院を受診するのをためらわないことです。
うつ病は、特に真面目、仕事熱心といった性格やストレスと大いに関係していることが多く、予防法としては自身の性格を知り、ストレス被爆を最小限に留めるような対処法やストレス発散などの生活の工夫を普段から心がけることが重要なことです。