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第9回「レム睡眠行動障害の検査と治療」

受診した病院で、「レム睡眠行動障害の疑いが強いので睡眠障害を扱っている専門の病院で検査と治療を受けるように」と言われました。どんな検査とどんな治療がされるのでしょうか?
(74歳、男性)

回答

本人は夢の内容は憶えていたとしても、実際の行動については記憶がありませんので、配偶者などのベッドパートナーが行動の様子を医師に詳しく話すことが重要です。
前回に述べましたように、レム睡眠行動障害と紛らわしい行動を呈する病気が幾つかありますが、この病気に精通している医師であれば、家族から話を聞くだけでほぼ診断がつきます。
しかし診断を確定するには、終夜睡眠ポリグラフィー検査が必要になります。この検査については、第4回ですでに説明していますので参照して下さい。

 ここではなぜ睡眠ポリグラフィー検査(PSG)が必要かについて少し説明を加えることにします。
PSG検査には、睡眠時の行動をビデオに記録することも含まれており、睡眠中の行動を翌日ビデオで再生して医師がみます。
また、前回述べましたが、この病気では夢を見るレム睡眠の時に運動に関係する筋肉の活動が停止しないために夢の行動化が起るのですが、その現象はPSG検査を行うことでしか確認できません。
この異常なレム睡眠が出現する時に行動を伴うことが確認されれば、間違いなくレム睡眠行動障害と診断できるのです。

 この病気の原因ははっきりしていないことが多いのですが、中にはレム睡眠を調節する部位の脳の梗塞や腫瘍が原因で起ることもありますので、脳外科や神経科で脳のMRIやCT検査を受けることも必要なことです。

 治療については、クロナゼパムを寝る前に服用する方法が一般的です。
翌朝にふらつきが残ることがありますので注意が必要です。
われわれは、メラトニンというサプリメントを用いて有効な例を数多く経験していますが、今のところ高齢者にも安心して投与できるようです。
しかし、日本ではまだ市販されておらず、医薬品としては使われていません。
またある種の抗うつ薬でも効果があります。いずれの薬を服用するかは、効果と副作用を考慮して、主治医とよく相談して決めるべきでしょう。

 また、ベッドでなくマットや布団を寝室の中央に置く、寝室の障害物を片付けるなどして、行動が起きた時に危険がないように寝室環境に工夫が必要です。
また、故意に殴って知らんふりをしていると誤解されて、夫婦関係がおかしくなった例も経験していますので、家族の病気に対する理解も必要なことです。