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第17回「子どもの夜間のパニック」

6歳になる息子のことですが、1年くらい前より睡眠中に突然に恐怖に怯えたように体を震わせて大声を出して泣き続けることが月に2-3回あります。
入眠して1-2時間後に起こり、数分後にはおさまって、また眠りに入ります。これは病気でしょうか? 夜尿もまだ続いています。
(35歳、主婦)

回答

このケースは、「夜驚症」と診断されます。幼小児期に少なからずみられるもので必ずしも病気とはいえません。
というのは、脳の発達という点で目覚めの機構が未発達なために、睡眠からうまく覚醒できないことと関係しており、目覚め機構が完成する思春期までにはほとんどが自然に消えるからです。

 夜驚は、ほとんどが4-12歳で始まります。深く眠っていた子供が突然に激しい叫び声や泣き声を上げ、怯えた表情でベッド上に坐り、興奮と不安で錯乱した状態を示します。
自律神経にも興奮がおこり、脈拍や呼吸数が増え、髪が逆立ったり、ひどい汗をかいたりします。また周囲の状況や自身に起っている事態を認識することはできません。
この恐怖にとりつかれたような混乱のエピソードはどんなになぐさめても鎮めることはできません。
1-10分で終わりますが、その後もしばらくは完全に目覚めることはなく、困惑と興奮が続いてまた眠りに入ります。翌日にはその時の行動は記憶していません。
このエピソードの最中に立たせると、ベッドから離れて歩き出し、ドアを開けて外に出て行くなどの「夢中遊行」に進展することがあります。

 夜驚症も夢中遊行も夢をみるレム睡眠と関係して起っているかのように見えますが、そうではなく深いノンレム睡眠から始まることが普通です。
このお子さんにみられる夜尿もそうですが、深い眠りの最中に脳に何らかの興奮が起り、そこから目覚める過程がうまくいかないために起るのだと考えられます。
その証拠に、夜驚も夢中遊行も夜尿も深いノンレム睡眠が出現する睡眠の前半で起ります。
てんかんの一種でもよく似た症状がみられますが、睡眠の前半に限って起らない場合はてんかんの可能性も除外できません。

 夜驚を持つ子の親は不安になりがちですが、ほとんどが思春期までに消失しますので、特別に治療を要しないことが普通です。
ストレスや不安が発現に関係する場合も多く、甘えん坊の男児に多いようです。ひどい場合は親子関係や環境の調整が必要なこともありますが、子供を叱責してはなりません。
修学旅行やキャンプの場合には小児科の医師に相談してはいかがでしょう。成人になっても消失しない場合は、精神科や神経内科を受診することをお勧めします。