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第13回「正午頃にしか目覚めない」

短大の2年生で、卒業後は就職する予定です。もともと夜型でしたが、短大入学後、夜は3時過ぎないと眠れず、正午頃しか目が覚めません。
無理に起こしてもらっても午前中はぼんやりしています。
朝起床ができなくとも学生生活はなんとかやれますが、就職したらそうはいかず、心配になってきました。
何とか普通の時間帯に眠れるようになりたいのですが。
(19歳、女子短大生)

回答

最近、極端に遅い時間にしか眠れず、起床時間も昼頃にずれてしまい、不登校や頻回欠勤などのために学校や勤務生活に支障、不適応を来たしている若い人が増えています。
これは「睡眠相後退症候群(DSPS)」という病気です。DSPSとは、睡眠そのものには質量ともに異常はみられないのですが、著しく遅れた時間帯でしか眠れなくなった状態が1ヶ月以上持続している場合を言います。
この中には、不登校や出社拒否、ひきこもりや精神病といった心理的、精神医学的な問題が原因で二次性に睡眠相が後退しているものもあります。
そうではない一次性のDSPSでは、いかなる状況でも通常の時間帯で睡眠をとれず、無理に起こすと、午前中は眠気、倦怠感、集中力困難が続きます。

 何故このようなことが起るのでしょうか。
人には生体時計という独自の時計が脳に組み込まれています。
最近、生体時計の変調が原因で起る「概日リズム障害」と呼ばれる新しい病気が増えてきました。
私たちの生体時計の1日は、実は正確に24時間ではなく、凡そ25時間であるために概日リズムと呼ばれます。ですから、生体は光や日課、時計時刻などを頼りに毎日約1時間だけ生体時計を早める作業をしています。
このリセット作業がうまくいかない時は、我々の生体時計の1日は約25時間となり、睡眠・覚醒リズムを含めて体に備わっている無数の概日リズムもそれに合わせて1日に約1時間ずつ遅れていくことになります。
こうなると入眠と出眠は毎日約1時間遅れていきますが、これが「非24時間睡眠・覚醒障害」という病気です。

 質問者のように、睡眠時間帯が固定したまま遅れている「睡眠相後退症候群」は、毎日行われる生体時計のリセットの問題というよりも、一旦数時間遅れた時計がそのままで動き続けているものと考えられます。

「概日リズム障害」が疑われる場合は、1ヶ月以上にわたって睡眠日誌を記入してもらい診断を行います。
治療は高照度光照射療法や薬物療法(メラトニン、ビタミンB12、一部の睡眠薬など)を組み合わせてうまくいくことがあります。