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第11回「試験中にも眠ってしまう睡魔」

3年くらい前から昼間に強い眠気がさすようになり、授業中に居眠りをして先生からよく注意されます。試験中にも眠りこんで、追試験を受ける羽目になりました。また、関係あるかどうかわかりませんが、大笑いした時に顎の筋肉の力が抜けて喋りにくくなることがあります。病気でしょうか。
(18歳、男子高校生)

回答

これは「ナルコレプシー」という病気であることに間違いありません。
ナルコとは眠り、レプシーとは発作という意味で、居眠り病とも言われます。

 ナルコレプシーは典型的な場合は10歳代で発病します。
この病気の症状は昼間の強い眠気から始まります。突然に眠りこけることもありますが、多くは眠気がだんだん強くなり耐え難い眠気となって、数分から数十分眠ってしまうのです。
眠るとすっきりするのですが、間もなくまた強い眠気に襲われるといったことを繰り返します。
学生では試験中に、営業マンでは大事な商談中に眠ってしまうことさえあります。
そして、もう一つ特徴的なことは、情動(驚き・笑い・興奮・大喜びなど)が引き金で姿勢を支える筋肉や筋肉の一部が急激に麻痺を起こし、倒れこんだり、呂律がまわらなくなるなどの脱力発作が起ることです。
その他に、入眠時幻覚と睡眠麻痺いわゆる金縛りを頻繁に体験するようになります。
また夜間には逆に不眠がおこる人が少なくありません。

 ナルコレプシーは、通常は症状のみからほぼ診断をつけることができますが、診断を確実にするには、反復睡眠潜時試験といって1日に20分間、計4-5回の睡眠記録を行います。
ナルコレプシーであれば、各検査で5分以内に睡眠が始まり、しかも2回以上の記録でレム睡眠が観察されます。
最近では、血液検査や脊髄液検査(ヒポクレチンの欠乏)で新しい知見が得られており、診断を確定するうえで役立つのですが、保険が使えず、しかも高価なためにまだ一般には行われていません。

 治療について言えば、昼間の強い眠気に対しては、覚醒作用のある中枢刺激薬が、脱力発作や金縛りには、レム睡眠の出現を抑えるクロミプラミンが有効ですが、治療は長期に続ける必要があります。
居眠りばかりしているために、交通事故を起こしやすくなり、学業成績や職業の遂行に障害を来たし、人間関係の信頼を失うことにつながります。
学校や職場で怠け者とのレッテルをはられ、居眠りに関係したあだ名をつけられるなど不愉快な思いをすることが少なくありません。
また、性格が変わっていくこともありますので、早目に睡眠障害に精通した医師の治療を受けることが必要です。